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ケイタイつながらないけど、心がつながりました。(まちセミ講演録:高野誠鮮その2)

2013/01/15 

スーパー公務員「高野誠鮮」さん講演会 

「こうすれば人は動き、まちは変わる」 

2012年12月15日 富山国際会議場

主催 NPO法人GPネットワーク

協賛 富山大手町コンベンション株式会社

その2

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私がコメを売ってみて本当に売れたらお前の言うこと何でも聞いてやると言われ私は平成17年にコメを売り始めました。

しかし、何をすれば良いか分からないので、とにかく何でもやってみました。学歴も肩書も全く通用しません。素晴らしい文書を作る。素晴らしい計画書を作る。そんなもの何にもなりません。

しかし、私には理解者がいました。犯罪以外なら全部責任を取ってやると言ってくれた上司がいたのです。そんな公務員初めてでした。それまでは、失敗したら誰が責任取るんだという上司ばかりでした。だいたい、自分で責任取らない人間に限って、責任、責任というのです。

その上司に恥をかかせたくないという思いが沸々と湧いてきました。琴線に触れたのです。

犯罪以外は全部やることにしたのです。

 

原油が値上がりしたら漁師は魚を捕りに行けないのです。農家はコメの値段を自分で決められないのです。これは産業でないです。

普通、農業の6次産業化というと、生産・加工・販売なのですが、我々は、生産・管理・販売だとも思っています。そして、産業として独立できるものを作ろう、それしか過疎を防ぐ方法は無いと考えました。流通の業態の変革です。

 

理念、哲学、これが一番大事なのです。哲学はフィロソフィー、フィロとソフィア、愛と知恵なのです。

吹けば飛ぶような学歴があっても、愛も知恵も無いのです。肩書があっても、愛も知恵も無いのです。

僕が尊敬する「ブッダ」はハーバード大学出ていませんよ。

日蓮上人も大好きですが、東京大学出ていませんよ。

イエス・キリスト、船大工の息子です。ハーバード出ていませんよ。

何を言いたいか、人間の本質、愛や知恵がある言葉は残るのです。浅知恵は残らないのです。

 

地域社会の一番小さな単位でみてみると人なのです。農村では、人が寄り添って家を作り、そして集落を作り、村、町、市になっているだけなのです。

人を見ないといけないのです。行政の究極の理想なのです。お互いに助け合わなきゃいけないのです。

 

自分の体で見てください。一つひとつの細胞が助け合っているんです。そして一つの細胞が消えるときは、その細胞のエネルギーを他の細胞に渡して消えていくのです。

血管に穴をあけて、もっと俺たちにエネルギーを寄越せといっている細胞、他にエネルギーを渡さず、独り占めして、どんどん増殖していく、そんな生き方をしている細胞を癌というでしょ。

癌みたいな生き方をしている人間もいます。どう生きなきゃいけのか。正常細胞は、ほかの細胞のために生きている。異常細胞は自分のためだけしかできません。

理想は何なのか。人なのです。

 

頭は愚かでも、人の体は完璧なのです。では、経済のモデルはどこにあるのか。人ですよ。血液は何か。貨幣ですよ。かつて1000人の村が500人になってしまった。それを、どう見れば良いか。ガリガリになってしまった自分の手だと思えば良いのです。では、何をすれば良いのか。自分の手は、はさみで切らないでしょう。リハビリ運動するに間違いないのです。痛くても我慢してリハビリ運動するのです。

そうすると何が起こるか。動脈経済、静脈経済が起こります。動脈が栄養を運んできてくれるのです。そして、痩せた細胞に栄養を落とすのです。お金です。消費されて静脈経済に返すのです。

お金が目的だとしたら、痩せてしまった自分の手に輸血したら何が起こりますか。紫色に腫れて、壊死しますよ。

人間の体ほど、必要なところに必要な血液をきっちり送っているモデルは、他にはありません。これが、私たちの理想なのです。

経済の理想、社会の理想、どこにあるのか、人間の体です。他には無いです。

 

最初にやったのは、「やる気」を見せることでした。

あいつら60万円しかないといっているが、本気でやるつもりらしいと思ってもらうための策をとったのです。

そのため、金沢大学から副学長を始め14人の教授陣を呼んでタウンミーティングを開いたのです。神子原は素晴らしい地域資源がある。生物の多様性も豊かだ。と、地域の人たちと話し合ってもらったのです。

では、大学から副学長を始め14人の教授陣を呼んで話し合うだけで集落は活性化するか。しません。あいつら60万円しかないといっているが、本気でやるつもりらしいぞ、副学長なんて初めて連れてきたし本気らしい。と思ってもらうことが目的でした。

 

同時にやったのは何か。根本治療と対症療法です。

根本治療、これは流通の業態の変革です。第3者が値段を付けるのではなく、農家そのものが6次産業化して独立できるようにしようという考え方です。農協に頼らない、自分で希望小売価格を付けるやりかたです。

対症療法、これは現実を見てやるのです。集落を見渡すと、かつて1000人いたのが500人になってどうなっているか見ると、農家の家はあるけど、人が住んでいないのです。空き家です。その空き家に対して、他県からの移住者を迎え入れるのです。しかも、高齢化しているので、若者を迎え入れるのです。

 

それをやっただけなのです。ただし、戦略は作りました。戦略が大事なのです。計画は作るけど、戦略を作らない。戦略を実行しない。というのが多いです。それはだめです。

三つの基本戦略を作ったのです。メディア戦略。できるだけ多くの人になびいてもらいたいのです。そのためにはどうすれば良いか。人の行動です。人間の行動は、目と耳から入った情報で心が動くのです。そして行動に出るのです。だったらできるだけ多くのところに情報を投げないと動く人は増えません。1万人くらいに話しかけて、ようやく100人位が動いてくれるのです。ですから、意識的にメディアを使わないといけないのです。

もうひとつ、農作物は結構安いのです。それを、どうやった高価値化するのかこれを考えました。すなわち、ブランド化戦略です。

もうひとつ、過疎の村にできるだけ多くの人にきてもらい、一番大事な栄養(お金)を落としていってもらいたいのです。そのための、交流戦略。この三つの戦略を同時にやっていったのです。

 

しかし、予算が無いので業者には頼れません。そもそも業者もいいかげんです。うちの会社はブランドを作ってきました、なんていう会社もありますが、よくよく聞いてみると、パッケージのデザインをしただけなんて話もよくあります。ただのデザイナーです。

ブランドを決めるのは誰なのか、消費者ですよ。作った本人がブランドだと決めたものは無いです。本屋の本「こうすればブランドが出来る。」嘘っぱちです。

 

とにかく、失敗しながらやるしかないのです。自分でやるのです。但し、常にど真ん中に過疎の村を置くのです。コンソーシアムを組んで、常に「神子原」という集落を真ん中に置くのです。またあいつら同じようなことやっているぞ、といわれながら、グルグルと回すのです。戦略とプロデュースを継続するのです。

但し、我々にノウハウが無いもの、例えばどうしたら美味しいお酒が出来るかなど、それは専門のところの助けを借りるのです。大学ももちろん活用させてもらいました。

「空き農家の情報バンク制度」というのを作ったのですが、全国の失敗例を全部調べました。同じ過ちをしないためには、失敗例を調べるのが良いのです。たくさんの失敗例を調べて、あることが分かりました。

 

頭を下げているところは全部失敗しています。お願いですからうちに来てください。大分県の山の中ですが、帯封がついたまま札束を渡すのです。お願いして来てくれるのはお客さんしか来ません。集落が来て欲しいのは、一緒になって汗を流してくれる人、村の住人なのです。お客ではありません。

 

私たちは、高飛車に出ることにしたのです。村に来たい人には試験を受けてもらうことにしたのです。まず、書類審査、それに合格したら現地見学会、そして、村の人たちが点数を付けるのです。さらに、一番高得点を取った人だけにもう一回来てもらいます。そして、むらの人たちで周りをとり囲んで、するどい質問をぶつけるのです。徹底的にやり込めるのです。そして、最後まで耐え抜いた人だけ、移住を許可するのです。

現在12家族35名。誰一人も出て行っていませんよ。移住をお待ちの家族が70家族以上あります。農家の空きがないのです。

 

次にやったのは、過疎の集落に女子大生を入れる事業をやったんです。男子はだめなんです。しかも、酒を飲める女子大生です。

国交省国交の補助事業、「若者の地域づくりインターン事業」、これは残して欲しい事業でした。蓮舫議員が事業仕分けしたようです。経験と知識が浅いと切ってはいけないものを切ってしまうんです。

な是、女子大生なのか、農家の裁量権は親父さんが持っているのです。サルの世界では、ボスザルのところに若いオスザルが近づくと喧嘩になります。若いメスザルだと未防備に受け入れます。しかも、酒が飲めるんです。

農家の親父さんは、役所が頼むから仕方なく受け入れるがと言いますが、本当は嬉しいのです。もちろん、食事代などはいただくのです。

 

これは、烏帽子親制度、かつての日本の伝統です。能登半島にはいまだに残っています。

ところが、この事業を始めると、県庁からクレームが来ました。保健所の許可はいつ取ったのか。旅館業法にも抵触するので、その手続きもしてください。と言われました。ほおっておいたらまた電話が来て、とうとう怒り始めました。食中毒が出たらどうするのですか、誰が責任とるのですかと言うんです。出たなと思って、県庁が責任取ってくれるのかと聞いたら、電話を切られてしまいました。

次は、この子達の現住所・連絡先を知らせなさいときたのです。何年、何月、何日、どんな食材をどう調理して提供したのか、全部書類にして出せというのです。農家のお年よりは、昨日食べたものだって覚えていませんよ。

さらに、地方公共団体ともあろうものが、何故、食品衛生法、旅館業法を守らないのか、顛末書を書いて、県の担当課長のところに、説明に出頭しろというのです。

出頭という言葉は犯罪者に向ける言葉です。私は行きませんでした。代わりに、朝日新聞と読売新聞の記者を2人送り込みました。

平安・室町時代からの伝統に今日になって法律を適用しようとするバカな公務員がいるのだけどどう思うかと伝えておきました。どうするつもりかと言うので、全面戦争だと言ったら、記者は市役所と県庁が全面戦争ですか、これは良いネタをありがとうといって、県庁にすっ飛んでいきました。

翌日、県庁は羽咋市の烏帽子親制度は、不特定多数を相手にした生業ではないので、旅館業法を適用しませんと言い出したのです。28軒でやっています。

 

農家民宿でも、必要なのは分かっています。しかし、ここは下水道も無い。旅館業法、食品衛生法に適合させるには500~600万円もかかります。ただでさえ疲弊しているところに、そんなこと口が裂けても言えません。苦肉の策です。

受け入れた家は、この家だけは、夜まで賑やかなのです。

 

特区も取りました。県には言いません。時間がかかりすぎます。国の担当者と直接やったら直ぐにできました。

棚田のオーナー制度も最初にやりました。しかも、案内は外電に対して行いました。

イギリスの新聞が扱ってくれました。イギリス大使館員が第1号で名乗りを上げてくれました。

 

日本人ほど、近いものを過小評価する人種は入ないのです。

なので、外国人が第一号で決まってから、地元のマスコミにも発表したのです。40組の募集に100組応募がありました。足きりです。

40kgの玄米を保証するから3万円払えというものです。農協なら60kg13千円です。農家は必ず得します。

しいたけ、なめこ、レンコン、たけのこ、オーナー制度、やれるものはみんなやりました。

最初に泊まりに来てくれた女子大生が、大学に帰って叫んでくれたのです。

「先生、変な村に行ってきました。」「農家に泊まったら、いきなり杯を交わされて、今日からお前はうちの娘だ、なんて言われ、烏帽子親制度をいまだにやっているのです。」

 

「ケイタイつながらないけど、心がつながりました。」

 

その3に続く・・・

 

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